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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

そこの森は二人にとっては思い出のある所だった。まだそのころは春だったが、二人の気持ちの初めて通じ合ったのは夜のその森の中のことで、それまでは矢代は千鶴子に物いうにも久慈に気兼ねを要したのに、真暗な森の中の道に迷ったのが二人の縁の初めとなり、一寸先も見えぬ闇の中を二人は手を引き合いつつ、湖のボートの傍まで出たのである。今は特にその思い出の巡礼をしようというのではなく、この度は食に困っての巡礼だった。

森の中のパピヨン・ロワイヤルだけは常の日と変らなかった。黄色と朱の縞目になったビーチパラソルが樹の幹の間に立ち並び、鉢台の上で淡紅色の紫陽花が花壇を造っていたのも、今日は大輪の薔薇一色に変っていた。矢代たちはようやく食事にありつけた明るさで空腹を満たすことが出来たので、食後のコーヒーも普段よりは楽しめた。鉢台の薔薇の間で輝いている湖上の白鳥を見ながら、矢代は、

「やはり額に汗してパンを食べるに限りますね。いつもよりずっと美味しい。」

とほくほくして云った。

「でも、いつもここまで来るのは大変だわ。」

葉の色よりやや薄い竹色の椅子の背には、ショールの銀狐が巻きついていた。