Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「こんなにお昼だと道なんか迷うほど面白いわ。もっと奥へ行きましょうね。道はうるさくって。」

こう云いながら行く千鶴子の後から、これでは案内されるようだと矢代は思って苦笑するのだった。そのうちあたり一帯背丈を没するほどな蕨の密集している原の中に這入ってしまった。そこを千鶴子はひるまず、両手で葉を頒けつつ突き抜けようとした。

「一寸待ちなさいよ。これやみな蕨ですよ、素晴らしい蕨だな。」

「これ蕨? 羊歯じゃありませんか。」

「いや、蕨が延びるとこうなるんです。籠を編む、ほら裏白とか何んとか云いましたね。」

「ああ、あれね。」

一群の羊歯に似た原が蕨の藪だと思うと、一層元気が出たらしい風で千鶴子はまた進んだ。このあたりは人も這入らぬと見え、原始林をそのままの形に残した物物しさにも、やはりどことなく人工が感じられた。矢代は千鶴子に手伝い裏白を頒け頒けしているものの、この無駄な努力に勢いを出すのも、もう永く遊んだ退屈さに耐えられなくなった二人だからだと思った。

「まるでこれや稲刈りだな。」

と矢代は云って笑った。千鶴子も笑いながら並んで同じ動作を繰り返していくのだったが、少し疲れて手から力を抜くと、たちまち密集して来る海老殻色の茎の弾力に跳ね返されて二人は打ちよせられた。