Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「ほんとに失敗ね、御免なさい、こんな所へおつれして。」
「今さら謝ったって、何もならん。」
「だって、こんなに深いと思わなかったんですもの。どうしましょう。」
棘にやられた手首の傷から血が出て来た。矢代はそれを毛物のように舌で舐め舐め云った。
「こうなれば日が暮れたってやるまでだ。さア、行きましよう。」
今度は矢代が先になって片足で円を描くように一群の裏白を割るのと一緒に、片手でぐいとその次の頭をかき頒けるようにして、これを左右交互に繰り返して進むのだが、原始の人間は毎日こんなことばかりを繰り返しながら、後から妻をつれ子をつれて道をつけたのだと矢代は思った。それがパリの真ん中に人間の原動力の泉のように一点ここだけ残されているのだった。行くうちに裏白の叢は黝ずんでねっとり湿りを含み、臭いもアルカリ性の強い朽葉の悪臭に変って来た。
「これや、冗談じゃない。とても駄目だ。」
矢代は投げ出すように千鶴子を見て云った。
「駄目かしら、森さえ見えればいいんだけど。」
「見えたって、服が蕨の悪汁で真黒になりますよ。」
矢代は茎の中へ片手をさし入れてみて顔を顰めた。
「風が通らぬから蒸せるんですね、これ、むッと熱い。