Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「抛り落すぞ。痛いや。」

「もう暫くよ。広いったらないわ。」

千鶴子はからかうように上から矢代の頭を撫でながら悠長にあちこちを眺めつづけた。困った果てにやむなくしたこととはいえ、何んの躊躇もせず自分の肩車に乗っている千鶴子を、可憐に思いまた支えた。

下に降りたとき千鶴子は裾を直し顔を赧らめて、「ああ面白かった。」と云うと、今度は急に黙って右の方の蕨の中を自分が先に割り進んだ。

全くこの蕨の原はひと目初めに見たときよりもはるかに広い地帯だった。二人は湿った部分を除けながらまた一と苦心をつづけていったが、もうどちらも汗にまみれてくたくたに疲れ、ようやく森の芝生の上に出たときには、真先に矢代は栗の樹の根もとに倒れてしまった。

「驚いた。あんなところにヨード・チンキの塊りがあろうとは思わなかった。あそこだけは誰も知るまいな。」

千鶴子も矢代の傍の草の上へ長くなった。

「ほんとにこの森、魔の森だわ。馬鹿に出来ないのね。」

「ストライキのお蔭で今日は飛んだ目に会わされてばかりだ。この調子だとまだ何か今日はあるかもしれないぞ。」

煙草を出して矢代は千鶴子に一本すすめ、梢の上を流れる雲に見入った。