Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
その後に、火の消えた瓦斯灯と枝を刈り落した坊主の樹が立っている。久慈は鋪石の上へゴム管から水の流れ出ているのを飛び越え、ずるりと靴の辷るのを危く踏みこたえたとき、初めて真紀子を見て笑った。
「辷るよ、そこ。」
「そう。」
二人は機嫌が悪いのでもない。どちらか物いう方が負けだと思う気ぐらいが、理由もなくただ神経に映り合っているだけだったが、なぜまた御機嫌を取り合わねばならぬのか考えればいまいましく思う今日の二人だった。
「昨夜、高さんに会ったんだってね。」
と久慈は真紀子を振り向いて訊ねた。
「ええ、オペラで会ったの。」
「踊りに行ったんだって?」
「ええ、モンマルトルへ行ったの。」
隠すかと思いのほか意外に真紀子ははきはきと答えるので、少し閊えていた久慈も急にほぐれ始めて元気になって来るのだった。
「高さん、遊びに来ないかな。いろいろ、中国のこと、訊いてみたいことも、あるんだが。呼びなさいよ。」
「いつでも来るわ。あの人、お呼びしてもいいなら、電話をかけてよ。」
「じゃ、頼もう。」
真紀子と高との間で、昨夜どのような事があったのかもう久慈は考えるのはうとましかった。