Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「何んだ。朝帰りが戸袋蹴ってるみたいな声出すな。」と云って笑った。
「ふん、猫がいくらガラス箱へ爪立てたって、駄目だよ。」
「おい、勘定。」
塩野はもうその場に耐えかねたらしく財布を出して立ち上った。そして、自分の金だけ払って外へ出ていこうとする後から、
「おい、塩野君、塩野君、一寸待ちなさいよ。」
と久慈に呼びとめられた。しかし、塩野は、
「ノートル・ダムだよ。後からでも来なさい。」
と云って戸口から遠ざかった。久慈は自分も勘定を払って真紀子に、
「ノートル・ダムへ行こう。あそこの方が白系よりやいいや。」と云って東野を一人残し塩野の後から出ていった。
「よし、僕も行くぞ。」
東野も身を起して財布を出した。ロシア人のボーイたちは習い覚えた片言の日本語で、
「サヨウナラ。」
「コンニチハ。」
と一同の出て行く後姿に向って挨拶した。丁度このとき、通りを来かかった政府の罷業委員が二三の部下をつれて店の前で立ち停った。そして手帳をくっては、命令に従わぬただ一軒のこの家の窓ガラスを見ていてから組合加入の証の張りついているのを認めると、渋りきった顔のまま仕方なく店の前から立ち去った。