Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

あたりの街の人人は、行進を見に行っているのかどこにも人影がなかった。通りの街角に造られた踊り場も、櫓の脚の木材だけ新しく石の間に目立たせたまま、一人の人も寄りついていなかった。石の古い空虚な街がかすかな傾きを明瞭に泛べている真上に、日のあかあかと輝いているのは、落ちている蝉の脱殻を手にしたときのような、軽い頓馬な愁いをふと矢代に感じさせた。間もなく、久慈は枕を脱したらしい膨れぼったい眼でその剽軽な通りを歩いて来た。

「いやに閑静だね。」

矢代の傍へ腰かけそういう久慈の籐椅子の背が、もうすでにぎしぎしとよく静かな中で響いた。

「婦人連は遅いね。塩野君さっきまでここに待っていてくれたんだが、もう皆いったよ。誰も彼も今日は血眼だ。」

「そうだろう。」

と久慈は云っただけでコーヒーと鮭を※(「口+云」、第3水準1-14-87)咐けた。いつもなら何んとか矢代に突っかかって来る彼だったが、今日は何も云わず、黙って額を揉みほごすと軽く横に振ってみていた。

「衝突はあったのかね。」

「さア、どうだか。」

矢代はふと椅子の下を走り廻っている一疋の鼠を見つけた。隙間のない石ばかり続いて出来たこんな所へ出て来ては、逃げるとすると、鼠も放射線を伝って郊外まで一里あまり走らねばなるまいと思った。