Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
あ奴が一番われわれには恐ろしい。」
アンバリイドからケエドルセイにかかって来ると、河岸の欄壁に添って古本屋がつづいて来た。一間ほどのうす緑の箱が蓋を屋根のように開いている中に、ぎっしり本や絵を詰めた露店であるが、上からは樹の芽が垂れ下り魚釣る人の姿も真下のセーヌ河の水際に蹲んでいる。矢代は前方の島の中から霞んで来たノートル・ダムの尖塔を望みながら云った。
「僕はカイロの回回教のお寺も忘れられないね。あれはここのヨーロッパに自然科学を吹き込んだサラセン文化の頂上のものだが、ナポレオンがあの寺を見て、癪に触って、大砲をぶつ放したのもよく分るね。ナポレオンが日本へ来ていたら、第一番に本願寺へ大砲をぶち込んでいたぜ。」
そう云えば矢代はエジプトのカイロのことを思い出す。あのピラミッドの真暗な穴の中を優しく千鶴子を助けて登った久慈の姿を思い出す。
エジプトまでは矢代と久慈はまだ親しい仲だとは云えなかった。それと云うのは、同船の客が港港の上陸の際にもサロンでの交遊にも、二派に別れてそれぞれ行動を共にしていたからであった。これらの二組の中には若い婦人も混っていた。