Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
客たちは誰もみなナシヨンかバスティユの方へ行っていたものらしく、サンゼリゼの出来事を見たものはないような話だった。殊に危険を冒してその日の写真を撮ったものは、塩野を措いて他の外人のうちには一人もいなかったにちがいない。
矢代はもう千鶴子と二人ぎりになりたかった。疲れも相当に激しく、また今さら云うべきことはないとはいえ、それでも今夜ひと夜よりないのだと思うと、やはり久慈に云われたように皆と別れて二人でいたいと思った。雨の湿気のためかいつもより煙草の煙がむせっぽく立ち籠って来るにつけ、各部屋の中からはしきりに激論が増して来た。それでも矢代の気持ちは始終表の街路へ向いがちだった。街角の闇の中に塊った警官隊の銃剣が濡れた鉄甲の部分と一緒に物音も立てず光っていた。どこかの踊りから脱けて来たのであろう、人通りもない石塀の傍をインディアンの仮装で疲れた足をのっそりと運ぶ画家らしいのが、二三槍を突きつき、「おう、おう。」と叫んで雨の闇の中へ消えていった。
「じゃ、ちょっと千鶴子さんの荷物の手伝いをして来るから。――すんだら来るよ。どこにいるかね。」
と矢代は立って久慈に訊ねた。