Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

。

冬はまだ全く去りかねたが、そのうち食事もようやく進むようになったある日、矢代と久慈とアンリエットと三人で、オートイユ競馬場にいったことがあった。この日は空もよく晴れていて、栗の林に囲まれた広い馬場の芝生の中で走る馬の姿は、それまで麻痺していた矢代の感覚を擦り落してくれた最初の生き物の美しさだった。日本でも見馴れた洋種の馬とここの馬の共通した栗毛の光った美しさは、捩子の利かない瓦斯にぼッと火の点くように、あたりの景色の美しさまで急に頭に手繰りよって来るのだった。競馬の終りの夕刻のころになって、急に春寒の野に霙が降って来たが、最後の障害物を飛び越した馬は騎手を振り落し、すんなりとした裸体で芽の噴きかかった栗の林の中を疾走してゆくその優美さ――矢代は霙に降り込められつつも立ち去ることが出来なかったその日の夕暮の感動を今も忘れない。

この日あたりから、矢代はパリの静かな動かぬ美しさが少しずつ頭に沁み入って来たといって良い。彼は一人セーヌ河の一銭蒸気に乗って河を下って見た。またバンセンヌの森へも行き、サンジェルマンの城にも出かけた。モンモランシイやフォンテンブロウの森などとパリの郊外遠くまで出かけてもいった。