Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「何んだ、それだけか。」
塩野の笑っているところへ酒が出て来たので活気づいた座の外へ、自然とアメリカの談が押し出された形となって、猪口が動いた。
「大石はどうしてる。」
こう云う由吉の問いから塩野と彼との間で、暫く大石の噂が出た後、それにつづいて由吉と塩野たちの、パリ、ロンドン間の交遊仲間の話ばかり懐しげに出揃った。それらの仲間はみな、パリの「十六区」に棲んでいる日本の上流階級の者たちばかりの名前で、あまり「十六区」を知らぬ矢代は、暫くは二人の話を聞かされる番だった。
「僕はもう少し早く帰る筈だったんだが、侯爵がね、どうしても一緒に帰ろうというので、つい船も延びちゃったのだよ。ところが、ニューヨークへ着いたら枕木が来てるんだよ。どうして来たものやら分らないんだが、婿も一緒さ。」
美しい松脂色のゴム絹の袋から、きざみ煙草をダンヒルのパイプに詰め詰め云う由吉の話を矢代は、自分と別れてからの、千鶴子の生活の匂いを嗅ぎつける思いで聞くのだった。由吉の話の中に、侯爵とか男爵とかと、名を云わずただ爵位だけで呼ぶ習慣のあるのも、塩野には当然のことらしく、彼も由吉に応じて笑ったり皮肉を入れたりした。