Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
科学的には、黴菌の少い西洋から湿気のため黴菌の巣窟になっている日本へ、急激に帰ったものに起る、あの特別な不明病ということにされているようだったが、しかし矢代にはそうは思えず、やはり、それはある選ばれた純真な心の人物に、自然が恵んだ一種のみそぎだと解し、もし久慈でも今いれば、こんなところが二人の一番論争の種になるところだがと思って苦笑した。
駿河台の病院へ矢代の行ったときは応接室にもう千鶴子が来て待っていた。医者に塩野の容態を訊ねてみても要領を得ずじまいで、ただ眠らせつづけている以外方法はないとのことだと、千鶴子は矢代に説明した。それなら病人を起こさぬ方が良いと矢代は思い、二人は病院を出てお茶の水の傍の見晴しのよく利く喫茶店を選んで入った。
「あなたの兄さん、御機嫌はどうです。」
晴れた空の中にニコライ堂の円頂もよく見えた。下の濠の傍を辷る省線の屋根を見降ろし、千鶴子と対き合っていると彼は云うことが何もなくなるのだった。
「兄はあなたに感心してましてよ。」
そう云いながら羞しそうに表情を曲げた千鶴子を見て、矢代は、兄よりも自分の方に味方をしている彼女を感じ、いつのまにか、自分も千鶴子とどこかで結婚をすませてしまった後のような気持ちにふとなった。