Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

彼はこれこそゆるがせにならぬ六次元の夢の厳しさ、みやびやかさだと思い、飛び起きると薄霧に包まれて朧ろにぼやけている太陽に向って礼拝した。あの方が自分に結婚を赦され希望を満たせて下すったのだと疑わず、彼は両膝を揃え、赤児のような心でまた幾度もお礼をのべた。

「今朝はお早いわね。」

母は朝食の仕度をしてくれながら、洗面に井戸端へ降りて行く彼に云った。

「どうも早く眼が醒めて。」と彼は気まり悪げに答えてから、ポンプで水を汲み上げて顔を洗った。それは洗っても洗っても、思わず顔の赧らんで来るような、何んとも云いかねる幸福な感じだった。

朝食をすませてから矢代は自分の部屋に戻り、また千鶴子のことを考えた。しかし、千鶴子はまだこの自分に与えられた幸福な感覚さえ少しも知らぬのだと思うと、彼は自分ひとり授けられた充実した幸福に変りはなくとも、何んとなく一抹のあわれを感じて来るのだった。それも前日の苦心がただ夢に顕れたに過ぎぬ、と云ってしまえばそれまでのことだったが、しかし、それなら夢中のことの方が、はるかにいのちの充実した真の生活だと思ったほど、すべてがまったく活きている以上の実覚に充ちた美しさだった。