Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「パリ文明もこの写真一枚に出ているね。美しいところだが惜しいものだ。僕の傍にいた紳士は、何アに、これはただフランスの病気だ、こんなものはすぐ癒るとそのとき云ったがどうだかねこの病気。」
と矢代は云って写真をはねた。次にチロルの氷河の写真が入り乱れて顕れた。氷の斜面に打ちつけたピッケルの痕から、光りの飛び散るように、日の射し返った氷河の面面が繰り出て来るその背後に、一連の山脈の写真が顕れると、やはり彼は愉しくなって興奮した。ハーフレカールの峯を仰ぎ、千鶴子と二人でミルクを飲んだ白い卓布に、物憂いまで強く射したあのときの日光。足もとの紫陽花に群れた蜜蜂。氷の斜面を這い降りて来ては二人で覗いたびいどろ色の深い断層。スイスの山の方向に流れるゆるやかな雲、牧場、サフラン、――矢代は追憶の愉しさのままにも、もう写真を放したくなり、
「ああ、もうよした。」
と云って皆テーブルの上へ伏せてしまった。すると、どういうものか写真に顕れた風景とは反対に、欅の下で石を動かしている土工の日焦した腕や、東北の海沿いの白い路に熟れ連っていた無花果や、上越の茂みの下を流れ潜る水の色などがしきりに泛んだ。