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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

」

こういうときにも、矢代はどこかに自分の笑いを狂わそうとする狡さを感じて苦しかった。

「しかし、ああ真面目な人だとね。」

と塩野はあくまで友人の苦痛を念う心配げな表情で考え込んだ。

「けれども君、僕らはギリシアへ還る運命を持っちゃいないよ。みな世界の学者たちが、そういうギリシアへ還る夢を抱いて勉強をつづけているのも結構だが、もっと他に持ちたい深い夢が、いくらでもありそうなものだと思うがね。」

矢代は自分の笑顔に射し込んで来た狂いを幾らかでも戻したく、そんなに云った。

話したって無駄なことだとは瞭かに分りながらも、やはり彼は、自分の感じた放射能のような千鶴子との結婚の夢の素質を信じたかった。

「しかし、カメラには夢はないからな。そこが僕らの一番困るところかもしれん。これから一つ夢を持ったり撮ったりする工夫をやるかな。」

ひやかすつもりはなく塩野は塩野で、何か専門のカメラに関する特殊な技術をまた別に思うらしい様子で暫く黙った。少しも二人の話が触れ合うところがなくとも、互に知らぬ部分でそれぞれ触れ動いているもののあったのを矢代は感じ、事実とはこのような恐るべきものかもしれないと思ったり、さらにまた過ぎた夜のあの夢の実相を、これがこの世の美の極りの消えるところかとも思ったりするのだった。