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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

」と女中に訊ねた。

「一時二十分。」女中は床の水仙から放した手の腕時計を眺めて答え、

「でも、この時計はときどき狂うんですのよ。」と注意して振子を捲いた。

「しかし、三十分も狂っていないだろう。」

「それは、――まア、五分か十分ですわ。」

それではちょうど千鶴子は大宮あたりで、鰻の駅弁の美しい鉢を眺め食慾を覚えているころだと彼は思った。

その夜時間を計り駅まで矢代は出かけた。吹雪になりそうな怪しい空模様だった。ホームのすぐ裏まで押し迫っている岩肌へ吹きつける風が、また巻き返って構内の柱を鳴らせていた。足駄で汚れた雪の残った待合室のベンチに汽車を待つ間、矢代は間もなく着く千鶴子のことを考え、どこか浮き浮きしている自分だなと思った、すると、夢に見た例の千鶴子のことを思い出した。そして、妙にその彼女の顔が気の毒な表情に見えると、あたりに飛んでいる愁い気な様子さえ覚えて耳を澄ますのだった。実際それは我ながらおかしい空想にちがいなかったが、不思議とその千鶴子に実感が籠っていて、

「まア、待ちなさいよ。何んでもないよ。」

と、山に籠ってからの独言のくせも出て、つい夢の彼女をなだめて云うのだった。