Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「お父さんの方はどうですか。」
と矢代は下の子供を見降ろしながら千鶴子に訊ねた。
「父はいいんですの。だけど、こんなことは、お母さんの云うとおりになる人なの。」
「僕の方はいつまでだって待ちますよ。あなたのお母さんにお会いしてもかまわないんだが、もっとはっきり嫌われるだけだと分ってからの方が、勇気が出るかとも思うので、まアそれまでは、このままの方が無事でしようからね。」
「あなたのお母さんは。」
千鶴子はそれが何より気がかりだという風に、急に欄干から頭を上げ眼を耀かせて訊ねた。
「僕んところの母は、僕が頼めば承諾は必ずしてくれると思うんです。しかし、あなたがカソリックだと分れば、それからが厄介なところがありそうですね。何しろ僕の母は法華なものだから、これは曲げようにも曲らない。しかし、ただ一つ見どころがあるので、そこを何んとかうまく僕はしてみるつもりです。」
矢代はこの宗教の違いのことだけは口には出すまいと思っていたのだったが、云うべきときには云って置くのも、後の邪魔を取り去る何事かになりそうに感じ、つい母の法華のことも云ったのだった。すると、籐椅子のきしむ音を立て急にまた千鶴子は悲しげに欄干の方へよりかかって下を見た。