Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
今としては、ただ双方に結婚の意志が失われずあると分っているだけでも、彼は充分に恵まれたこととしなければならず、その他のことではたとい不満なことが多かろうとも、結婚を急ぐことさえしなければやがて消えるべき不満だった。
雪の中に蜜柑の皮の落ちているのを眺めながら、矢代は自分の母へ千鶴子のことを打ち明けることも考えた。しかし、それも彼女の母の気持ちの定らぬ限りまだ云い出すときでもなかった。もしそれを云い出したときの渋る自分の母の顔も想像出来た。殊に両家の財産や宗教や、血統などの違いを知った場合に起る母の足踏みを思うとき、
「さて、困ったね。」
と思わず火鉢の上へ胸をのり傾けて呟いたが、それもさほど弱ったことでもなく、そんなに呟いてみただけのようなものである。
雪に包まれた中で舌にのせる汁粉は美味だった。満目の白さが甘い液汁を包んだ塊のように見えて、日に解けとろりと崩れた部分の湿り工合まで、味わい深かった。
駅からの帰りは橇にせず彼は歩いていった。靴の下で根雪の鳴るのもこの朝のは踏み応えのある音だった。辷らぬように彼は両手を大きく拡げ、鰐足になって、ゆっくり歩くうち妙におおらかな気持ちを覚え、枯松葉を焚く匂いがどこからか掠みとおって来ると、それがまた奥山の匂いとなり一層胸が緊った。