Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「どうも懐しいですね今日は。」
と壁面の写真を眺めながら挨拶した。小柄ながらも、いたって無頓着そうな、飄飄とした味いのある顔だったが、ときどき異様に鋭い閃きを見せる眼つきも伴い、人を見抜く才能の豊かさが頷けた。すると、丁度その後を追うように昇って来たこれも小柄な老人が、いきなり男爵の後から両肩をぐっと掴んだ。そして、子供が戯れるような恰好で、後の男を見ようとして振り返る男爵の眼を避けつつ、右に左に身を翻してふざけ始めた。観衆は何事かと二人の様子を眺めていたが、老人はそれらの視線には一向頓着なく、なお真顔で執拗くふざけつづけていた。
「誰かな、む? 高橋君か。どうも巧妙に逃げるところを見ると、――北浜君らしいぞ。」
踉めきながらそういう男爵の背広が、だんだん後へ脱げそうになって来ても、老人はまだ赦そうとしなかった。
「やア、君か。」
とうとう見つかって男爵に云われたとき、初めて立ち上った老人は、今度はにこりともせず、
「今日は苦労をさせられた。今日中に五十万円集めよという命令さ。それで実は追っかけて来たんだけれども――ああ、くたびれた。」
と云って両腕を曲げ後に反った。