Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
冬の日の障子の明るく冴えたその向うで、「ちッちッ」と鳴く鶯の声も、流れ移っていった旅の日の、空を仰いだときどきに感じた郷愁に見えたりした。
暫くすると足音がして、母が矢代の部屋へお茶と菓子を持って這入って来た。午後ならばともかく午前中、厳格な母は矢代にこうしたことは、今までにあまりなかった。
「今日は良いお天気ですね。ひとつ今日は畑を打とうかと思ってるんですよ。」と矢代は母に云った。
「畑を? お珍しいことね。そんな手で出来ますか。」と母は笑った。
窓の外を見上げ差し向いに坐っている二人の傍で、鉄瓶は湯気を上げて鳴り、なお鶯は枝から枝へ飛びわたって、今までひそかに矢代の待ち望んでいた梅の枝まで来た。
「昨夕のこと、お父さんにお話したの。そしたら、お父さんお喜びになってね。もうそれは、ほくほくしてらっしゃるの。」
母もいつもとは違い子供のような言葉でそう云うのを、矢代はああ、あのことかと思った。あのことは昨夜帰ってから久木男爵と会った始終のことを、父には云わず母に矢代が話したのを、母はそのまま父に話したらしい。今から思うとそれは些細なことだったが、父にはやはり些細なことに響く筈もなく、家の空気が俄に大きく膨らみのぼった吉兆のように感じたにちがいない。