Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
それはそうと、僕の家の一番古い先祖の名は、分ってる範囲ではどういうところですか。」
「藤原基経だ。わしの親父は、子供のころそう云うていつも聞かしてくれたが、嘘か本当か知らないよ。」
父の郷里から発行されている郡誌を読み、そこに書かれたこと以外にまだ家の歴史を知らなかった矢代には、基経というその名は初めて聞くことだったので、意外な無作法をしていたように改った気持ちになるのだった。
「藤原基経というと、時平の父のあの基経のことですか。最初の関白の。」
「それはどうだか分らないね。しかし、名前だけはそうだった。」と父はさも興味なさそうな声で答えた。
しかし、矢代は二度と訊くこともない父の一言の答えのように思われなお胸にその名を呟いた。恐らく祖父も曾祖父も今自分が父からこうして無造作に話されたと同様、いつか機嫌の良いこんなある夜に聞かされたものだろう。そして、基経の名だけは、自分の後から来るものにも、家の続く限り記憶に繰り返され蘇ってゆく代りに、やがて、自分や父の名は忘れ去られるにちがいない。しかし、その中でも、父の残した逢坂山のトンネルだけは、以後これで、基経の名と共に子孫の頭の中から消え去ることはなかろうと思った。