Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
彼はちょっと手で摘まみたくなったほど、それは燃え尽きる最後の透明な焔の美しさだったが、見るまにそれも素の入った白骨に変っていった。実に迅速な火の変化だった。
「では、どうぞ。」
矢代は皆にお辞儀をして、竹の箸で先ず最初に咽喉仏を摘まんで壺に入れた。続いてそれぞれ一二箸ずつ適度に摘まんでくれたので、その暇に彼も自分の箸を目立たず千鶴子に渡すことが出来た。千鶴子は骨に頭を下げると、袂を片手で絞り上げ、緊張した眼もとで胸の部分の骨を摘まんだ。長い竹箸のかすかに慄えの見えるその先から、壺に落ちる骨のがさッと鳴るのを矢代は聴きとって、これで父だけは二人の結婚を許可されたと初めて思うのだった。
骨壺を白木の箱に納めてから、一行は来たときの座席のまま自動車で帰った。もう夕暮が迫って来ていて、西の方の空がぱッと茜色に明るかった。その明るさの中で、骨箱を包んだ布が大きな傷口のような鮮やかさで彼の眼に沁みついた。彼の膝の上に乗せた骨箱が車の速度で胸に押しつけて来るのを感じ、その変った軽さになった父を思うと、また刻刻その布の白さに漂白されて変ってゆく自分を感じた。
それは薄氷を踏むような薄寒い思いに似た、鋭く不安定なうつろな圧迫だった。