Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
頑なさに見えて来て、じろじろ驚きながら千鶴子の膝を見るのだった。それも、今ごろ突然そんな感じに襲われて来たということが、一層自分の憑かれていたものの激しさを今さらに感じられて、茫然とした思いでまた海を眺めた。
「ホテルはとってあるのかね。このまま東京へ帰るんじゃないだろう。」と遊部は由吉に訊ねた。
平尾男爵は子供づれだから分らないが、長い外遊のものに即日の帰宅は無理だから、今夜はニュー・グランドになるだろうという一同の意見だった。歩廊には刻刻出迎えの群衆が増して来た。中に田辺侯爵夫妻の顔も揃って顕れると、由吉たちの周囲は船を待つ間のもどかしさが無くなり、歩廊の欄干の傍に出揃って沖の方を向いたまま、一同につきものの機智諧謔が流れ始めた。
「東野さんと真紀子さん、どうして一緒に帰る気になったのか、あなたは御存知ですか。分ったようで僕には分らないんだが、手紙には何も書いてなかった。」と矢代は傍の千鶴子に訊ねた。
「それは書いてないの。ただね、お話することいろいろあるんだけど、今は書く勇気がないって。そして、自分の旅は悲劇だったって、書いてあるだけなの。」
階下から閃き出て来た黄いろな蝶が歩廊の柱の間を飛び廻っているのも、春の日射しを受けた海の色を鮮明に明るくした。