Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

矢代は、そこの白壁に射し返った入日を受け、ペンキ塗の緑の鉄柵の影が折れ曲っているのを見ているうち、ふと急にうつろうものの寂しさを覚えて来るのだった。

「ああ、横浜へ行きたい。」

と、そうアンリエットの洩した嘆息も、あの主の変った廃館を見たかったためだったのかと、彼は自分に会話を教えた教師の胸に今も失われぬその夢の巣を、彼女に代ってなおよく覗いた。入日の変化につれて、海草の広大な層がそこだけ見る間に黒く変っていった。残光の漂った水面を掠め汽笛がまた鳴りつづけた。そして、時計の歌の消え入るような余韻を腹に沁み透らせ、港はしだいに灯を明るくしていった。

「矢代さんにお話したいこと、それはいろいろあるの。いつかまた、ゆっくり落ちついたときにね。」

と真紀子は食卓につく前に、あきらめに似た悲しさを含んだ声で、矢代の傍へ来て云った。

「どうぞ、是非来て下さい。」矢代は真紀子の不幸な旅を慰めるつもりで短く云ったのだったが、しかし、自分はこのような屈託のないことも、帰って以来千鶴子にまだ一度も云ったことはなかったと思った。

一同が食堂のテーブルについたころ外はまったく暗かった。