Japanische Klassiker mit Furigana
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うえの
日和下駄 一名 東京散策記
永井 荷風
Lesen Sie 日和下駄 一名 東京散策記 (うえの) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.955 Zeichen · 70 Bildschirme
わたくし達は又既に百花園の荒廃に帰して今更これを訪うべき価値のないことをも熟知していた。さればこの場合に之を云々するのは、恰も七十の老翁を捉えて生命保険の加入契約を勧告し、或はまた玉の井の女に向って悪疾の有無を問うにもひとしく、あまりにばかばかし過る事である。是亦車中百花園行を拒むもののなかった理由であろう。わたくし達は、又日々社会の新事物に接する毎に絶間なく之に対する批判の論を耳にしている。今の世は政治学芸のことに留らず日常坐臥の事まで一として鑑別批判の労をからなくてはならない。之がため鑑賞玩味の興に我を忘るる機会がない。平生わたくし達は心窃にこの事を悲しんでいるので、ここに前時代の遺址たる菊塢が廃園の如何を論じようという心にはなろう筈がない。これが保存の法と恢復の策とを講ずる如きは時代の趨勢に反した事業であるのみならず、又既に其時を逸している。わたくし達は白鬚神社のほとりに車を棄て歩んで園の門に抵るまでの途すがら、胸中窃に廃園は唯その有るがままの廃園として之をながめたい。そして聊たりとも荒涼寂寞の思を味い得たならば望外の幸であろうとなした。
予め期するところは既に斯くの如くであった。