Japanische Klassiker mit Furigana
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うえの
日和下駄 一名 東京散策記
永井 荷風
Lesen Sie 日和下駄 一名 東京散策記 (うえの) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.955 Zeichen · 70 Bildschirme
顔立は面長の色白く、髪の生際襟足ともに鮮に、鼻筋は見事に通って、切れ長の眼尻には一寸剣があるが、案外口元にしまりが無いのは糸切歯の抜けているせいでもあろう。古風な美人立の顔としてはまず申分のない方であるが、当世はやりの表情には乏しいので、或人は能楽の面のようだと評し、又或人は線が堅くて動きのない顔だと言った。身丈は高からず低からず、肉付は中の部である。着物の着こなしも、初て目見得の夜に見た時のように、いつも少し衣紋をつくり、帯も心持さがり加減に締めているので、之を他の給仕女がいずれも襟は苦しいほどに堅く引合せ、帯は出来るだけ胸高にしめているのに較べると、お民一人の様子は却て目に立った所から、此のカッフェーに出入するお客からは忽江戸風だとか芸者風だとか言われるようになった。大分心やすくなってから、僕達の問に答えて、お民の語ったところを聞くのに、お民は矢張その様子にたがわず東京の下町に生れた者であった。
「わたし、生れたのは薬研堀ですわ。お父つァんはとうに死んじまいました。」
僕は薬研堀と聞いて、あの辺に楊弓場のあったことを知っているかと問うて見たが、お民は知らないと答えた。