Japanische Klassiker mit Furigana
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うえの
日和下駄 一名 東京散策記
永井 荷風
Lesen Sie 日和下駄 一名 東京散策記 (うえの) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.955 Zeichen · 70 Bildschirme
初めに給仕を介したり或は名刺を差付けたりする者はまだしも穏な方であった。遂には突然僕の面前に坐って、突然「オイ君」という調子でコップを僕の鼻先につきつけるものもあるようになった。
此等の人々は見るところ大抵僕よりは年が少い。僕は嫌悪の情に加えて好奇の念を禁じ得なかった。何故なれば、僕は文士ではあるが東京に生れたので、自分ではさほど世間に晦いとも思っていなかったが、何ぞ図らむ。斯くの如き奇怪なる人物が銀座街上に跋扈していようとは、僕年五十になろうとする今日まで全く之を知る機会がなかったからである。
彼等は世に云う無頼の徒であろう。僕も年少の比吉原遊廓の内外では屡無頼の徒に襲われた経験がある。千束町から土手に到る間の小さな飲食店で飲んでいると、その辺を縄張り中にしている無頼漢は、必折を窺って、はなしをしかける。これが悶着の端緒である。之を避けるには便所へでも行くふりをして烟の如く姿を消してしまうより外はない。当時の無頼漢は一見して、それと知られる風俗をしていた。身幅のせまい唐桟柄の着物に平ぐけをしめ、帽子は戴かず、言葉使は純粋の町言葉であった。三十年を経て今日銀座のカッフェーに出没する無頼漢を見るに洋服にあらざればセルの袴を穿ち、中には自ら文学者と称していつも小脇に数巻の雑誌数葉の新聞紙を抱えているものもある