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Japanische Klassiker mit Furigana

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にほんにおけるくりっぷんじけん

日本に於けるクリップン事件

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 日本に於けるクリップン事件 (にほんにおけるくりっぷんじけん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.290 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

「犬が女を喰い殺したのだ、」――彼にはやっとそれだけが分った。何となれば、エスはその時馬方に対する警戒を解いて、再び屍骸を嬲り始めた。その屍骸には、――始めて彼は気が付いたのだが、――頸ばかりでなく、至る所に喰いちぎったような傷痕があった。

程なく警官と警察医の臨検となり、縛られていた男、即ち小栗由次郎と、証人の馬方とは、一往警察署へ引致されたが、そこで図らずも、小栗の説明でこの不可解なる惨劇の内容がすっかり分った。小栗のいうには、死んだ女は芸名を尾形巴里子という歌劇女優で、自分の内縁の妻である。そしてその晩も、彼はいつものように巴里子に折檻されていた。巴里子は彼を素裸にさせてから、寝台の上へ臥ることを命じ、しかる後にその手と足とを犬の鎖で緊縛した上、革の鞭をしごいて体じゅうをぴしぴしと殴った。彼は苦痛に堪えられないでひいひいと悲鳴を挙げつつあった。ところが一方、この十日程前に、わざわざ上海から取り寄せたジャアマン・ウォルフドッグ(独逸種狼犬)があったが、体量十三四貫もある猛犬であるから、階下の一室へ繋いでおいたのに、それが悲鳴を聞くや否や、主人の危急の場合とみて、突然綱を引きちぎって扉を蹴破り、二階の部屋へ駈け込んで来て巴里子に躍りかかったかと思うと、一撃の下に彼女の喉笛を喰い切ってしまった。