Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
微暗くなった竈の下には、火がちょろちょろと燃えた。
里芋が煮え、茶が沸いた。老婆は里芋を皿へ盛って仏壇の前へ往き、それをさっきの餅と並べて供え、その並びの棚から油壺を執って、瓦盃に注ぎ、それから火打石でこつこつと火を出して灯明をあげ、それがすむと前に坐って念仏をはじめた。
老婆の前には、黄濁色の顔をしたお爺さんが来て立っていた。そして、お勤めがすむと、老婆の心は餅に往った。老婆は餅も喫ってみたければ、初物の里芋も喫ってみたかった。
(餅は寝しなに喫おう、今、喫っては旨くないから)
老婆は庖厨へ戻って、行灯を点け、その灯で夕飯の箸を執った。そして飯がすむと、膳をかたづけて、室の隅から練った麻と、小さな桶を持って来て、麻を紡ぎはじめた。小さくへいで捻りあわせた麻糸は、順じゅんにその桶の中へ手繰り込まれた。
老婆は時どき降りて裏口にある便所へ往った。暗い中に虫の声が聞えていた。うすら寒い風が襟元を撫でてさびしかった。彼女は何時の間にかお爺さんのことを思い出していた。
お爺さんは亡くなる日まで、何かと云えば口癖のように離縁する離縁すると云っていた。その詞がお婆さんの耳に蘇生っていた。