Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
小八はまた立山の一件を話して、
「この幽霊が山の上をひらひらと往くじゃねえか」と、云ってきまり悪そうにする女の顔を見て笑った。
「御免よ」と云って庭からぬっと顔をだした者があった。肩に両掛の手荷物を置いた旅人であった。それは亡者宿の主翁であった。小八は一目見て主翁が女のことでかけあいに来たなと思った。小八は一寸困ったがそれと共に金を詐取せられた怒が出て来た。
「手前は亡者宿の主翁だな」
「そうだよ」
「なにしに来やがった」
「其処にいる女を伴れに来たのだ」と、主翁は嘲笑って云った。
それを聞くと仲間の者が惣立になった。主翁は声を立てる間もなく八方から滅茶滅茶に撲られて戸外へ突き出された。主翁の額や頬からは血が流れていた。主翁はしかたなく小八の家主の処へ往った。家主の老人は何事だろうと思って行灯を提げて玄関前へ出て来た。
「私は、立山の宿屋の主翁でございますが、貴下の店子の小八さんが、この間立山へ来られて、大金をかけて雇ってある婢を伴れだして、逃げましたから、今日江戸へ着いて掛合にあがりますと、大勢の朋友といっしょに酒を飲んでいて、私をこんな目に逢わせました」