Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
続いて人の叫ぶ声がした。邸の裏の山林が火を発したところであった。真紅な火は裏山の空に燃えあがって、その焔が風に吹かるる秋雲のように西に東に切断に飛んだ。
「旦那、大変、大変じゃ」
臣は手燭の火を落して叫んだ。監物は刀を投げ捨てた。
「甚六、この不動様を戸波へ戻しに往け」
「あれ、あれ、旦那、山火事でございます」
監物の耳へは何事も入らなかった。監物は唸るように云った。
「甚六、甚六、早く不動様を戸波へ戻しに往け」
山林の火は四方へ燃え拡がって山の畝りをはっきりと映しだした。
「甚六、早く往かんか、甚六」
監物の声はうわずって聞えた。
不動尊の木像はその夜のうちに戸波の積善寺に返して、薬師堂の中へ元のように納めた。そして、その勢では附近の山林を焼き尽さねば休まないように思われた山火事は、案外僅かばかりの焼けかたでこともなく消えてしまった。
余話
大正九年八月某日、土佐を漫遊していた桂月翁と私は、戸波の青年に招かれて須崎と云う海岸町から戸波の家俊へ往った。それは虚空蔵と云うつくね芋の形をした、土佐では人に知られた山に驟雨のくる日であった。
登山の好きな桂月翁は、青年に伴れられてその山へ二日続けて登ったが、不精者の私は旅館の二階に寝ころがって俳句などを考えていた。