Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
瀑下の右になった窈黒な巌穴から松の幹のような大蛇が半身をあらわして、上の方に這いあがろうとしているところであった。黒いその背はぎらぎらと光って見えた。……よし打ってやれと篠原の主人は思った。彼はその蛇を打って村の人を驚かしてやりたかった。彼は後戻りして瀑壺の縁の巌を伝うて瀑下へ距離を縮めて往った。恐ろしい胴体はのろのろと動いていた。好奇な猟師はやがて足場を固め、狙いを定めて火縄をさした。篠原の主人の耳には谷全体が鳴動するように響いて、大きな長い長い胴体は瀑壺の中へ落ちた。
篠原の主人は思い通り蛇が打てたので、大に喜んでやはり猟師仲間の親類の男を呼んで来て、それに手伝ってもらって皮を剥ぎ、それを持って帰って庭前の立樹と立樹の間に長い竹を渡してかけた。それを知った村の人びとはぞろぞろと篠原へ集まって来て、その皮を見て驚嘆した。篠原の主人は得意そうに蛇を打った時の容を話して聞かせた。
「こいつは雄じゃ、彼処には雄と雌の二つおるから、そのうちに雌もとるつもりじゃ」などとも云った。
その夜篠原の主人は、隣家の者を三四人呼んで酒を飲んでいた。そのうちには皮剥ぎを手伝ってもらった親類の男もいた。