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Japanische Klassiker mit Furigana

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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme

Aozora Bunko

貧しい漁師の家は、その日の漁に莫大な利益を得て、忽ち村一番の長者になり、何不自由のない身の上となったが、漁師の神経には、鮭の腹から出た蕎麦のことがこびりついて消えなかった。

その前後から漁師の女房は妊娠して翌年の夏になって出産したが、それは醜い女の児で、そのうえ、顔には魚の胎児のような赤い斑点があり、頭髪も縮れていた。その醜い我が子の顔を一眼見た女房は逆上して、それがために産後の肥立ちが悪くなって、とうとう死んでしまった。

長者の眼の前には、二三日鮭を獲ることを見合せと云った旅僧の姿と、鮭の腹から出た蕎麦切が縺れ合って見えていた。長者は怖ろしそうな顔をして乳母に抱かれている醜いわが子を見ていた。

長者の家はますます富んだ。どんな慾望でも願うて得られないものはなかったが、醜い女の顔は如何ともすることができなかった。長者は女が人並の女になれるなら、己の持っている富を無くしてもかまわないと思った。

女はもう年比になっていた。魚の胎児のような赤い斑点はますます拡がりを持ち、縮れた頭髪は赤茶けて見えた。女も醜い顔を怨み歎いて、人に見られないようにと、何時も、奥深い室に籠っていた。