Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
大塚は肩にしていた銃をおろし、土に背をもたし腕組みして考え込んだ。
(ここで俺がこのまま切腹したとしたなら、家の女房や、小供はどうなるだろう)
彼はもう自殺をするものとして死後のことに就いて考えていた。考えているうちに何か不意に注意を促されたものがあった。彼は顔をあげて井戸の口の方を見た。井戸の口に赤い顔が見えた。
(何人か覗いておるぞ、人が来てくれたか、人が)
赤い顔の周囲には白い毛並があった。茶色の二つの眼が光っていた。それは猿であるらしい。
(猿じゃ、人間なら引きあげて貰えるが、猿じゃしかたがない)
大塚はがっかりしたように云った。覗いていた赤い顔がきゃっきゃっと二三回声をたてたかと思うと、もう見えなくなってしまった。
(人間の真似ができると云っても、やっぱり猿は畜生じゃ)
大塚はまた腕を組んで考え込んだ。彼はまた己の死後のことをそれからそれへと考えていた。その大塚の耳に微な音が入って来た。井戸の口のあたりで風でも吹いているようなどうどうと云う音であった。大塚はまた眼を開けて井戸の口の方を見た。
一掴みばかりの枝屑がぱらぱらと落ちて来た。大塚は顔を伏せてその塵を眼に入れまいとした。