Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
綱のようなものはもう五六尺もさがって来た。それは藤葛のような大きな葛であった。葛はもう一丈以上も下へさがって来た。
(それでは、初めに猿と思った赤い顔は、猿でなしに、このあたりの人であったのか、これで俺は助かった)
大塚は穴の上の方を喜びに満ちた眼で見あげた。赤い顔がまた覗いている。それはさっきの顔であったが、赤い眼鼻の周囲に白い毛の生えた大猿の顔であった。
(たしかに猿じゃ、人間ではない、では、猿がこんなことをしてくれているだろうか、そう云えば、さっき井戸の上を飛び渡った獣は、どうも猿らしかった、では猿の群が俺のここに落ちたことを知って、助けてくれようとしているのか)
藤葛はもう二丈余りもさがって大塚の頭へ届きそうになって来た。
(猿でもかまわん、助けてくれるなら、助けてもらおう、この井戸の中からだしてもらおう)
大塚はおろしてあった銃を肩にかけて藤葛の手比になるのを待っていた。藤葛はしだいしだいにおりて来た。大猿の顔はまだ見えていた。大塚はその藤葛を手にしてその端を帯に差してそれを折り返した。きゃっ、きゃっと云う猿の鳴き声が聞えた。それは井戸の口にいる彼の大猿の叫びであった。