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Japanische Klassiker mit Furigana

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うつりが

日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江

近松 秋江

Lesen Sie 日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江 (うつりが) von 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.306 Zeichen · 300 Bildschirme

Aozora Bunko

それでもまだ女の顔は見られなかった。不安のあとから不安が襲ってきて、いろいろに疑ってみたが、あんなにいっていたからよもや来ないことはあるまい。そんな背を向けて欺き遁げるような質の悪い女ではないはずである。そんなことをする女を、おめおめ四、五年の長い間一途に思いつめ、焦がれ悩んでいたとしたら、自分はどうしても自身の不明を恥じねばならぬ。義理にもそんな薄情な行為を為向けられるようなことを、自分は少しもしていない。……今に来るにちがいない。不安の念を、そう思い消して待っていた。

しかし、それは何ともいえない好い晩春の宵であった。この前の冬の時と同じように女の来るのを待っている心に変りはないが、あの時とちがい今は初夏のころとて、私は湯上りの身体を柔かい褞袍にくるまりながら肱枕をして寝そべり、障子を開放した前栽の方に足を投げ出してじっと心を澄ましていると、塀の外はすぐ円山公園につづく祇園社の入口に接近しているので、暖かい、ゆく春の宵を惜しんで、そぞろ歩きするらしい男女の高い笑い声が、さながら歓楽に溢れたように聞えてくるのである。花の季節はもうとうに過ぎてしまったけれど、新緑の薫りが夕風のそよぎとともにすうっと座敷の中に流れこんで、どこで鳴いているのか雛蛙の鳴く音がもどかしいほど懐かしく聴えてくる。