Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.765 Zeichen · 21 Bildschirme
菊枝は蒔きつけた種子に心をこめて祈った、「どうぞ一粒でもよいから芽をだしてお呉れ、おまえが芽生えたら、わたしが姑さまのおそばにいられる証だと思います」そしてかの女の新らしい生活がはじまった。
大きな不幸にあったためか、姑はまえよりも勘がにぶくなっているように思えた、食事こそどうにかひとりで済ませるけれど、そのほか立ち居につけ起き臥しにつけ、夜半にさえも菊枝の介添えがなければ用のたらぬことが多かった。なによりも案じたのは、自分だということを感づかれることだったが、そのためかしてどうやらその心配もなく、お秋どの、お秋どのと気やすく呼びかけるし、こちらのすることは、なんでもよろこんで肯いて呉れた。これならもう大丈夫であろう、そう思いはじめたある日、かの女は畠の隅で唐苣の芽ぶいたのをみつけた、「ああやっぱりおもいがとおった」そう思うと同時に熱いものがこみあげ、かなしいほどのよろこびて胸がいっぱいになった。ほとんどぜんぶの種子が芽生えたとみえ、小さな柔らかいあさみどりの嫩が、びっしりと土の面を埋めている、「ひとつも枯らさずに育てよう」菊枝はそう誓いながら唐苣の根をおろしたように自分のいのちもこれで此処に根をおろしたと思った。