Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.765 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

菊枝は黙って聞いているうちに、なぜともなく登野村にいた時の或る日のことを思いだした。

「豆腐をかためるにはにがりが必要だ」と云った良人の言葉である、そのときは千坂対馬の子与市清高が客に来ていた。二人でながいあいだ話しているうちに、そういう部分だけきこえた、菊枝はわけがわからず、ただ可笑しく思っただけであったが、いまふとそれを思いだすと同時に、なにかしら強く胸をうつものが感じられた。にがりをいれると、豆腐になるべき物とそうでない物とがはっきり別れる。良人はそう云った、理由はわからないけれど、それはどうやらこんどの事件にかかわりをもつ言葉のように思える。菊枝はにわかに胸苦しくなりだした、どんな意味なのだろう、良人はなにを云おうとしたのだろう。――そうだ、良人のようすが変りはじめたのもあの頃からだった、もしや……。もしや良人はこんどの事件の起こることを知り、その結果を知っているために、そして妻にその累を及ぼしたくないために離縁したのではないだろうか、そう考えると思い当ることが多い。そうだ、それに違いない、菊枝はそう思うとともに、自分は登野村を出るべきではなかったと気づいた。