Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.620 Zeichen · 26 Bildschirme
それを境として私の生きかたはずいぶん変った。むろんその意味がすぐにわかったわけではないし、――力んで考える、というお言葉は、却って当分のあいだ私を不愉快な気持にしたほどである。けれども、そのまえとそれからあとでは、ものの見かたも考えかたもまるで違うようになったのだから。……
明くる年の春のことだった。暖かい日で、さかりを過ぎた桃の花がしきりに噴き井の上へ散りかかっていた。散った葩は溢れる水に乗ってくるくるとまわり、やがて追いつ追われつ井桁の口から流れだしてゆく。清冽な水と、苔の濃い緑と、葩のうす紅との色の調和も美しかったし、私はしばらくわれを忘れて見惚れていた。するとおばあさまがふと思いついたという風に「あなたはお嫁にゆかないおつもりですか……」と仰しゃった。私はからだが硬ばるように覚えてすぐには返辞ができなかった。江戸にいた頃に幾つか縁談もあったが、自分のみめかたちのよくないことと、和歌の本分に恵まれているという高ぶった考えから、どのはなしにも耳を藉さず押し通して来た。成ろうことなら一生好きな歌を作って世を送りたい、それがなにより望みだったのである。