Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.743 Zeichen · 22 Bildschirme
竹のつやつやと青い肌を見ていた藤右衛門は、小走りにいそいで来る廊下のあしおとを聞いてわれにかえったように筆をとりあげた。
「申しあげます、父上、申しあげます」
長子格之助の声であった。
「あけてよい、なにごとだ」
「病間へおはこびください、母上のごようすが悪うございます」
「……そうか」
「すぐおはこびくださいまし」
藤右衛門は立とうとして、どういうわけか一瞬ためらい、机の上にひろげてある稿本の文字に眼をやった。なんのつもりか自分でもわからなかった。それで硯箱のありどころを直しなどして立ちあがった。渡廊下を母屋へわたり、鉤のてにまがって奥の間、中の間、内客の間とゆくと、そのあたりの廊下にはもう老若の家士たちがつめかけ、いずれも石のように息をころし頭を垂れて端坐していた。藤右衛門がはいっていったとき、妻はまさに息をひきとったところであった。長子格之助、二男金三郎、格之助の嫁なみ女、裾のほうには妻の愛していた婢頭そよもいた。みんなせきあげて泣いていた。
「まことにお安らかな、眠るような御往生でございました」
さいごの脈をとっていた医師がそう云うのを聞きながら、藤右衛門はしずかに枕許へ坐った。