Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.187 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

お高は殆んど聞きとれぬほどのこえで「はい」と答えた。そこまでことをわけて云われるのをむげにもできなかったし、重い病に臥している生みの母の、ひとめ会いたいという言葉にもつよく心をうたれた。乳ばなれをするとすぐ松代へ貰われて来たそうで、西村の父母の顔はまったく記憶にはない、もしものことがあれば、生みの母の顔も知らずに終らなければならない、いちどだけお顔を見せて頂こう、そう考えて承知したのであった。

同じ組長屋でもごく近しくしている石原という家の妻女にあとの事をこまごまと頼んで、その明くる朝はやく、松本から迎えに来たという下婢と老僕にみちびかれながら、あとにもゆくさきにもおちつかぬ気持でお高は松代を立った。季節はすっかり春めいていた。遠いかなたの山なみにはまだ雪がみえるけれど、うちひらけた丘や野づらはやわらかな土の膚をぬくぬくと日に暖められ、雪解の水のとくとくと溢れている小川や田の畔には、もうかすかに草の芽ぶきが感じられた。二十里そこそこの道だったが、ひどくぬかるので馬や駕籠に乗りながら三日もかかり、また冬がもどったかと思えるほどひどく冷える日の午後、ようやく松本の城下へ着いた。