Japanische Klassiker mit Furigana
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そうしゅん
早春
Lesen Sie 早春 (そうしゅん) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.135 Zeichen · 7 Bildschirme
いや、彼等の心臓さえはっきりと人目に映ずるのを感じた。しかしこの標本室へ来れば、剥製の蛇や蜥蝪のほかに誰一人彼等を見るものはない。たまに看守や観覧人に遇っても、じろじろ顔を見られるのはほんの数秒の間だけである。……
落ち合う時間は二時である。腕時計の針もいつのまにかちょうど二時を示していた。きょうも十分と待たせるはずはない。――中村はこう考えながら、爬虫類の標本を眺めて行った。しかし生憎彼の心は少しも喜びに躍っていない。むしろ何か義務に対する諦らめに似たものに充たされている。彼もあらゆる男性のように三重子に倦怠を感じ出したのであろうか? けれども捲怠を生ずるためには同一のものに面しなければならぬ。今日の三重子は幸か不幸か全然昨日の三重子ではない。昨日の三重子は、――山手線の電車の中に彼と目礼だけ交換した三重子はいかにもしとやかな女学生だった。いや、最初に彼と一しょに井の頭公園へ出かけた三重子もまだどこかもの優しい寂しさを帯びていたものである。……
中村はもう一度腕時計を眺めた。腕時計は二時五分過ぎである。彼はちょっとためらった後、隣り合った鳥類の標本室へはいった。