Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじのランプ
明治のランプ
宮本 百合子
Lesen Sie 明治のランプ (めいじのランプ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.154 Zeichen · 5 Bildschirme
政恒は、その日から薄茶を断って生涯を終った。政恒は六十歳で没した。六十歳の息子のなきがらの前にややしばらく坐っていた八十一歳の曾祖母は、おうん、と嫁である私の祖母をよんで、政恒も可哀そうに、薄茶を一服供えてやれっちゃ、と米沢の言葉で命じた。祖母は思わず一生に一遍の口答えを姑に向って、その位なら、せめて、息のあるうち上げたかった、と云ったそうだ。
政恒という人は所謂乾分はつくらなかった。然し有望な青年たちの教育ということには深い関心をもって一種の塾のようなものを持っていたことあり、そこに長男であった父精一郎はじめ、何人かの青年が暮した。伊東忠太博士、池田成彬、後藤新平、平田東助等の青年時代、明治の暁けぼのの思い出の一節はその塾にもつながっていたらしい話である。
父は死に到る迄死ぬことを考えない活気で若々しく活動していた人であった。最後の一年ばかり前、或る海岸で珍しく父は幼年時代の思い出話を私にしてくれた。
いくつかの人々の名、祖父の塾の名も話され、私はノートにでも書きとめたかったのだけれども、ほんのその夜の感興で話している父の前へそういうものをとり出して、さも二度と来ない機会のように感じさせるに忍びない心持から、ついそのままになった。