Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

Lesen Sie 明治開化 安吾捕物 (めいじかいか あんごとりもの) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.950 Zeichen · 85 Bildschirme

Aozora Bunko

ただ出入りのお客の世話をやき、扉を開けたてする役であった。そして、この黒人がドアに左手をかけたとき、克子は目にとめて奇妙によく覚えていたが、その左手の指はたった三本しかなかったのである。

★

その翌日の暮方、克子はやつれ果てて我家へ戻ってきた。生きている人間の顔ではなかった。

兄の病床を見舞って以来一睡もせぬ克子ではあったが、今朝はこんなにやつれてはいなかった。通太郎も急変にそなえて別室に一夜を明したが、事もなく一夜は明けて、その報告に病室から現れてきた克子の顔は、疲れはあっても明るかったのである。そこで通太郎も安堵して、克子を残して己れは我家へ立ち戻ったのである。

しかるに短い冬の一日が暮れるまでの時間のうちに、妻は死の国を往復して、ようやく再びこの世へ這い戻ってきたような様子である。あの世を往復した人間にはこの世の挨拶がないのであろう。我家へ立ち戻って良人に再会しても感情すらもないようであるから、さすが沈着の通太郎も、

「まさか兄上の身にもしものことが……」

と思わず立ち上ると、克子はようやくこの世の風が目にとまったように、良人の胸に顔を埋めてさめざめと泣きくずれてしまった。