Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はるのやま

春の山

久生 十蘭

Lesen Sie 春の山 (はるのやま) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.782 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

吉青年は、おれたちは三浦党の後裔だなどと、つまらないことをいって威張っているが、紅ヶ谷、飯島、名越、三浦道寸の城のあった小坪あたりまでの地積は北条経時の領地で、明治の中頃に乱橋村という区分になり、名主だった松井の先々代に支配されていた村方一般の子孫なので、ものの考え方や生活感情に、習俗とでもいうような共通したものがあるらしい。周平にたいする当りかたはまず尋常で、東北の山奥の部落民のように他所者扱いをしていじめるようなことはしないけれども、正体の知れない、わけのわからないようなところがあって、簡単にはあしらいかねた。

無為と倦怠の中で風化したような、この空家に入りこんだ当座、みじめなくらい孤独だが、煩わされることのない清らかなよろこびにみちた生活に、周平は深い満足を感じていたが、おいおい春めいてくると、おだやかすぎる気候と、人生のない淡泊すぎる環境に気おされ、いちど見切りをつけた煩わしい生活へ、人間がひしめきあう喧騒の世界へ、しばらく立戻ってみたいと思うようなこともあった。

そういう春の朝、周平がモーターでタンクに水をあげて遊んでいるところへ、のっそりと六さんがやってきた。