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Japanische Klassiker mit Furigana

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はるのやま

春の山

久生 十蘭

Lesen Sie 春の山 (はるのやま) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.782 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

「それがどうも弱るんで……ここで先生に臍を曲げられると、大事になる」

吉青年は割膝になってかしこまると、ついでに床に両手をついて頭をさげた。

「先生、このとおりだ」

「家をあけてくれなら、あけてやってもいいが、あてなしに出るというわけにはいかないな」

「釣をするなら何隻でも舟を出します。ゆっくり行っていらっしゃい」

「甘く見るな。そんなものの言いかたがあるか。ものを頼むなら、筋を通してから頼むもんだ」

吉青年は頭を抱えて、

「うむ……と唸ったね。これは村方の神事みたいなもんで、亡くなられた松井の旦那も東京の奥さまも、承知のうえで見ないふりをしていてくれるんです。四県五郡の親分衆が、昨夜から宿をとって場の立つのを待っているという正念場だ。たのむよ、先生」

春秋二回、彼岸の中日に、近県の親分が集まって、松井の邸の奥の囲地で闘鶏の関東大会をやるのが、久しい以前からのシキタリになっている。もっとも、仲間だけの手合せなら、夏冬なしにやっているがと、ひとを馬鹿にしたようなことをいった。

「なんだ、うちの地内で、そんなことをやっていたのか」

このあたりの自然の風致は、のどかすぎてとるところがないと思っていたが、退屈そうな見せかけをした庭の奥で、そんな活溌な情景がくりひろげられていたとは考えもしなかった。