Japanische Klassiker mit Furigana
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はるのとうぞく
春の盗賊
Lesen Sie 春の盗賊 (はるのとうぞく) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.212 Zeichen · 58 Bildschirme
人に頭をさげて、金銭のことをたのむということは、これは、実に実に、恐ろしいことなのだ。戦慄の悲惨である。私は、いまこそ、それを知った。作品で、大金を得るということは、なかなか至難のことであるから、私は、ほとんど、それを期待しない。あれば、あるだけの生活をするつもりだし、無ければ無いで、あわてないように、ふだんから、けちにけちに暮しているのだ。そうして居れば、なんにも欲しいものがない。あてにしていた夢が、かたっぱしから全部はずれて、大穴あけて、あの悽惨、焦躁、私はそれを知っている。その地獄の中でだけ、この十年間を生きて来た。もう、いやだ。私は、幸福を信じない。光栄をさえ信じない。ほんとうに、私は、なんにも欲しくない。私には、いまは何も、必要なものはないのだ。こうして苦しみながら書いて、転々して、そうして二、三の真実、愛しているものたちを、ほのかに喜ばせ、お役に立つことができたら、私は、それで満足しなければならぬ。空中楼閣は、もう、いやだ。私は、いまは、冷いけちな男だ。私は、机のひき出しの二十円を死守しなければならぬ。私は、平気で嘘をついた。「いや、このひき出しの中にお金が在りそうに思われるのは、それは君の勘のにぶさだ。