Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅんもう
春盲
豊島 与志雄
Lesen Sie 春盲 (しゅんもう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.296 Zeichen · 17 Bildschirme
」
「饒舌るのが煩いから……。そんなら、わたし黙ってますよ。」
黙りこくって酒を飲んだ。
山田はふいに顔を挙げて言った。
「新緑の旅、きっと行きますよ。」
「あら、そんな占いなんかできめたこと、わたしいやだわ。」
「占いは別のことです。実は、一週間ばかり旅行しなければなりません。新緑の旅は、その後でいいでしょう。」
「どこへいらっしゃるの。」
「水戸方面、それから真直に東へ……。」
「まっすぐ東へ行ったら、太平洋じゃありませんか。」
「そうです、海の中です。」
「でたらめを仰言ると、また……。」
彼女は抓るまねをしたが、山田は構わず占いを続けた。だが、でたらめを言ったのではなかった。汽車に乗って真直に行く……いや汽車が真直に走ってゆく。水戸から先、真直に東へ走ったら、太平洋にはいり、海底へ没するだろう。没してもなお、真直にどこまでも行くんだ。ちょっと来いも何もかも、もう間に合わないのだ。
そこに、遠い遠い疎隔があった。ただ、それに耐え得られるか。
山田はトランプを投げ出して、立ち上った。
「もう帰ります。」
美津子は酔いの廻った黒光りする眼で、じっと山田を眺めた。
「帰りますよ。