Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しゅんもう

春盲

豊島 与志雄

Lesen Sie 春盲 (しゅんもう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.296 Zeichen · 17 Bildschirme

Aozora Bunko

ふと眼を覚して耳を傾けると、たしかに馬の足音だった。それも、騎馬の威勢よい速足ではない。何か重い車でも引いて、遠い道を疲れながらこっとりこっとり歩いてる音だ。

交通に便利な街道筋なら、夜中でも、トラックが走り、荷馬車が通うこともある。然しこの辺の街路は、日が暮れると共にひっそりしてしまい、朝日がだいぶ昇るまで大きな物は通らない。地の利が悪いのだ。それなのに、三更を過ぎた深夜、重い車を引いた馬が、こっとりこっとり歩いてゆくのだった。いったい、どういう荷物を引いてるのであろうか。何処から来て、何処へ行くのであろうか。敷石の上に蹄鉄の火花を散らすこともなく、もう疲れきって頭を垂れ、眼をしょんぼりと開いて、こっとりこっとり歩いてゆく。

それを何度も山田は聞いた。枕の上で耳を澄ましていると、馬の足音はやがて遠ざかり、深い夜陰の彼方に没してしまい、山田も蒲団の中に頭を埋める。そして朝になって、思い出してみても、それが果して現実だったのか、夢だったのか判然としなかった。然しいずれにしても、心にはっきり残ってることに違いはなかった。

これに比べると、太鼓の音はもっと明瞭だった。