Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.831 Zeichen · 396 Bildschirme
ここで長三郎は、お安の口から更に不思議なことを聞かされた。
ゆうべの夜なかに、病人のお勝が苦しそうに唸り声をあげたので、父の伝兵衛が起きて行ってうかがうと、お勝の部屋には燈火を消してあって、一面に暗いなかに小さい白い影が浮いて見えた。それは白い蝶である。蝶は羽をやすめてお勝の衾の上に止まっている。伝兵衛は床の間の刀を取って引っ返して来て、まずその蝶を逐おうとしたが、蝶はやはり動かない。伝兵衛は刀の鞘のままで横に払うと、蝶はひらひらと飛んで自分の寝巻の胸にはいった。
伝兵衛は妻のお富をよびおこして手燭をともさせ、寝巻を払ってあらためたが、どこにも蝶の影は見えなかった。あなたの眼のせいでしょうとは云ったが、お富も一種の不安を感じないでもなかった。お勝をゆりおこして訊いてみたが、お勝は別におそろしい夢に魘されたのでも無く、唯うとうとと眠っていて何事も知らないと云った。
話は単にそれだけのことで、しょせんは伝兵衛の眼の迷いと云うことに帰着してしまったのであるが、場合が場合であるだけに、どの人の胸にも消えやらない疑いが残っていた。臆病なお安は頭から衾を引っかぶって夜の明けるまでおちおちとは眠られなかった。